津波発生原因の多くは地震による海底地殻変動に起因していると言われ、津波波源形状を地震より推定した断層モデルで与える方法が提案されてから、地震津波の再現計算に多くの成果が上げられている。しかし、この断層モデルは一様なすべり量をもつ単一もしくは2個程度の矩形断層で近似されており、大規模断層運動を説明するには不十分であることが最近指摘されている。そこで本研究では、まず、過去のイベントを例に不均質な効果が津波初期波形に及ぼす影響を把握し、従来の波源モデルでは説明できなかった津波挙動解明の基礎とした。特に証言や映像が数多く残っている1983年日本海中部地震津波を扱い、その実際の証言と数値モデルとの矛盾点を明らかにし、証言を説明できる新たな波源モデルを提案した。北断層には副断層を仮定し、南断層には非地震性の変位過程を設けた点に特徴がある。これは地震学で注目されているAseismic Eventの解明に貢献できるものである。また、不均質断層が津波波形に及ぼす影響を分散性や検潮記録分解能の点に注目して評価した。地震以外の原因による津波の発生として1883年クラカタウ噴火津波を例に、その発生機構を解明した。これは予想される最大規模の噴火による津波である。ここではカルデラ形成を仮定し、その発生時の数値振動除去や初期波形などの問題点を解決し、最も可能性のある発生メカニズムであることを示した。以上、いずれも現在の津波波源モデルの見直しとその改善方法を主眼としたものである。
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