研究概要 |
今年度は、主に、潅木材が形成される過程を調べた。対象樹種はカワヤナギとした。 まず、鳴瀬川の過去の航空写真から,水制設置後の潅木林の形成の状況を調べた。その結果、数年間で土砂が沈積した後、10年程度で潅木林の形成されている事例が多く見られた。また、一旦形式された潅木林を伐採した部分があり、洪水で堆積土砂が失われていた.このことから、潅木林の土砂移動抑止効果はかなり大きいものと推定された. 吉田川において、洪水後の潅木の状況を調べた。その結果、比較的小さな洪水であったにもかかわらず、高水敷の潅木がかなり倒状していることがわかった。また、倒状することにより、下流側の草本類を死滅させるとともに、自身はすぐに新しい小枝を生長させ、以前よりも広い範囲を覆うようであった。このことから、潅木は、洪水などにより倒れたり傾いたりすることで林を形成するのではないかと推定された. 吉田川で潅木のサンプルを収集し、流水抵抗についての室内実験を行った。その結果、潅木の流水抵抗は主に葉が受け持っており、また全抵抗は葉の枚数と流速の2/3乗に比例することが明らかとなった。これは葉の1枚の上に層流壊界属が形成されていると考えれば理解できる結果である。 吉田川で、6本の潅木について、幹、枝の接合状態と葉の付き方を測定した。この結果と上述の流水抵抗試験の結果、及び曲げ強度についての室内実験の結果とから、潅木(カワヤナギ)が倒状する流速の算定を行った。その結果、倒状流速は60cm/sから100cm/Sの範囲となり、先に述べた現地の様子、すなわち小洪水でも倒状する潅木が見られたという事実と矛盾がなかった。
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