本研究は、河川工学における実用性の高い数値解析手法の構築を目的とし、現状の数値解析手法の問題点を解決するための要素技術を開発したものである。内容は、乱流モデルの改良、数値誤差の影響を受けにくい基礎方程式の定式化、移流-拡散方程式の高精度離散化スキームの提案および連立一次方程式の反復解法のベクトル化である。 第2種2次流を解析対象とした代数応力モデルを開発し、複雑な横断面形状の開水路及び管路乱流に適用した。提案したモデルが平均流速とレイノルズ応力に関する実験結果を良好に再現することを確認した。また、自由水面近傍での乱流諸量の漸近挙動を検討した。 境界適合座標系を使用すると、基礎方程式の移流項から保存形で表現されない項が新たに派生し、その取扱いが解析結果の精度に大きく影響を与える。本研究では、解析領域に対しては境界適合座標系を流速場にはデカルト座標系を使用する定式化を行った。未知量は非スタガード格子状に配置し、圧力場の振動解を抑える方法を組み込んだ。 従来の高精度スキームの問題点である非物理的な振動解を抑制するために、移流フラックスをその点近傍での解の分布形に応じて調整する非線形の制限関数を導入した。その制限関数を高精度で広い安定条件を有するQUICKESTスキームに組み込む方法を提案し、その優位性を線形及び非線形の移流-拡散方程式への適用を通して確認した。 数多くの連立一次方程式の反復解法について性能比較を行い、MSI法や前処理付きの共役勾配法系統の解法が収束速度や必要な記憶容量から判断して有利であることを見いだした。また、多数の反復解法をベクトル化手法を提案し、その手法がスーパーコンピュータ上で解法本来の収束速度を全く損なうことなく計算時間を短縮させることを確認した。
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