研究概要 |
波による底泥移動量を算定するためのモデル化が現存までにいくつか行われている。しかし底泥の物理的性質の把握が不十分なために底泥の性質を正確に反映したモデルとはなっていない。本研究では底泥物性の計測を波動場に関して広範な条件のもとで正確に行い、底泥を粘弾塑性体として仮定した場合の数値モデルに用いること目的として、計測結果を基に底泥物性を評価するための方法を示した。 まず底泥の移動状況と底泥物性を把握するために正絃振動型の粘弾性測定器を新たに作成し、総ケ-ス数216ケ-スと広範囲の条件にわたって底泥の粘弾性測定を行った。その結果から含水比、ずり速度、ずり変形、振動周期などを変数として粘性係数、弾性係数の値の変化を調べた。物理的な検討からは粘性係数に関しては含水比、ずり速度が、また弾性係数に関しては含水比、ずり変形、振動周期などが重要なパラメタ-となることが予測できる。実験値に関してこれらのパラメタ-との相関を種々検討した。その結果、最終的には粘性係数については含水比とずり速度の関数として表した。また弾性係数については、含水比と振動周期の関数として表し、それぞれを実験値からの回帰式で表した。粘性係数に関しては含水比が低いほどずり速度の増加に応じて粘性係数が急速に減少することが分かった。また、含水比が300%を超える底泥についてはほぼニュ-トン流体として取り扱かえるようである。 さらに、この結果を用いて数値モデル(多層粘弾性体モデルに対応する)を改良し、より底泥の物性を反映できるようにしたものと、Sakakiyama,Bijkerの実験結果と比較した。従来のモデルに比べて予測の精度が向上していることがわかる。以上述べたように本年度は波動条件における底泥の物性を検討した。その結果、さきに開発した底泥移動量予測数値モデルによる算定をより広範囲な条件について、現実に近づけることができた。
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