海域に流入する河川水の拡がりの動力学特性の解明を研究目的し、本年度は三次元密度流数値モデルの開発とその精度向上、ならびに数値模型の作成を行った。 (1)三次元密度流数値モデルの開発:従来経験的な判断に委ねられていた成層効果の定量的な評価を行い、鉛直方向の渦動粘性係数・渦拡散係数の最適な成層関数を確定した。数値計算結果と既発表の水理実験結果との比較により、提唱モデルが表層密度噴流および表層プル-ムの拡がり特性を十分な精度で予測できることが確認された。また、三次元表層密度噴流の挙動に及ぼす放流条件の影響についても検討を行った。 (2)河川プル-ムの拡がり機構の解明:浅水海域に流入する河川プル-ムの挙動を予測するために三次元数値モデルの適用を図り、明石川流出流の現地観測結果との比較を行った。流動場、密度場とリフト・オフ現象の比較から、提案モデルが明石川河川プル-ムの拡がり特性をうまく予測することが確認された。さらに、運動方程式の各項の寄与度を定量的に評価することによって動力学特性が明らかになった。 (3)淀川洪水流出流への適用の試み:気象衛星NOAAが撮影した淀川洪水流出流は幅10kmで神戸沖を西進し、淡路島東岸に沿って南下するのが観察された。これは恒流分布から予測される「淀川河川水は泉南沖を南下する」挙動とは著しく異なる。ロスビ-変形半径を算出したところ、その長さスケ-ルは約10kmであることから、洪水流出流の振舞いには密度流に加えて、地球回転の影響があると予想できる。また、潮流の影響も見逃せない。これらの考察から、次年度の研究の準備として、三者を同時に考慮でき、しかも大阪湾の地形も詳細に再現できる数値模型に製作を行い、予備実験を実施した。
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