(1)暴浪下での集合的な土砂輸送を実験室内で再現するための振動流水槽を製作し、目的とする精度の流れが起こることを確かめた。また本研究費の設備備品として購入した高速ビデオカメラ・ビデオデッキにより、底質粒子の運動を撮影・解析する実験システムを作り上げた。(2)上述の振動流水槽を用いて、シ-トフロ-層内部の流動現象を調べた。シ-トフロ-層厚に関しては、底質層表面に作用するせん断力の無次元量(シ-ルズ数)に比例すること、底質の流動速度は上方に向かうにつれ、直線よりさらに増速する「上に凸形」の分布をすること、濃度分布はサルテ-ション層の上端と不動層上端の間で「上に凸形」の分布をすることがわかった。現在、濃度と速度の積で得られる漂砂量の鉛直分布について解析を急いでいる。流速分布・濃度分布・漂砂量分布については、今回の実験結果を整理し、外力条件をパラメ-タとした普遍表示式について、現在検討中である。(3)シ-トフロ-漂砂は高濃度の固液混相流で測定が難しいため、研究者によって大きく異なる結果が報告されてきたが、本研究と従来の実験結果との比較検討から、これまでの知見の妥当性を判定・整理することができた。(4)シ-トフロ-層厚の時間変化を記述する理論モデルを考察した。その結果、層厚は流れによる底面せん断力のみならず、圧力勾配、粒子間摩擦角、液層が上載荷重を受け持つ割合等によって記述されることが明らかになった。また本実験とも、定量的にはいくらかの相違が見られるものの、結果の特性は表現できていることがわかった。この理論的な力学モデルを拡張し、底質の流動速度・濃度・漂砂量が記述できるよう現在考察中であり、実験結果との比較検討から信頼性の高い力学モデルとして完成させることを次年度の課題としたい。
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