昨年度に引き続き、シートフロー漂砂が生起するときの流速場の解明と漂砂量の評価に関する実験を行った。昨年度は高速ビデオ撮影の画像解析により、底質粒子の濃度と移動速度を別個に測定し、その積から漂砂量を求めたが、本年度は以下のような新しい方法で漂砂量の測定精度の向上を行った。すなわち、観測部中央を挟んで一方に着色粒子を、他方に着色しない粒子を敷設し、半周期間の振動流作用下における2つの粒子群の境界の移動状況から求める方法である。 実験は2種類の粒子を用いて全部で25ケース行われた。測定結果は、移動層厚・移動速度など様々な観点から検討された。 粒径・材質の異なるプラスチック粒子を用いた本年度の実験結果からも、底質移動層厚は、昨年の結果と同様シールズ数に比例することが確認され、底質濃度の鉛直分布の特性も昨年の実験結果と同じ特性を示した。 最終的な漂砂量の結果は、シートフロー漂砂に関する他の研究者の結果と比較・検討された。その結果、本実験結果は既往の実験データのばらつきの中央に位置し、掃流力がシートフロー漂砂の場合ほど大きくない領域に対して提案されたGrant‐Madsen公式を外挿した曲線で良く表現できることがわかった。 しかしながら、本課題は多量の土砂輸送が伴う非定常混相流であり、巨視的な結果は上述の結論で表現できるものの、より一般的な外力条件下で漂砂量を精度良く定量化するには、実験条件の範囲が狭く結果のばらつきも少さくない。今後さらに解明すべき力学機構がいくつか存在し、そうした課題が明らかにされたことも本研究の成果と言える。
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