今年度は、前年度に引き続き、道路整備が持たらす様々な効果について主として、地域住民の生活環境の改善度として評価する方法を検討した。ここでは、次のような検討手順を考慮した。1)交通施設整備に関わる改善度、地域の生活環境評価項目を言語変数(例えば、たいへんよい、やや悪いなど)によって地域住民に質問した。2)これららを、ファジィ測度による可能性分布によって定量化した。3)ファジィ測度によって得られた評価値を効用値として、各評価値属性の重要度の選好関係をファジィ寄与ルール法を用いて決定する。4)さらに各属性の効用の総合化による整備事後評価を行なう。ここでは、ファジィ積分によるファジィ評価方法を考える。5)最後に、交通施設整備による改善度、生活環境満足度評価の結合による事後評価法についての考察、検討を行なう。交通施設評価のための項目は、利便性、保健性、接近性などに関わる17項目、生活環境評価項目としては、15項目選定した。具体的な調査対象としては、北海道滝上町で、国道273号浮島トンネル開通効果について行なった。その結果を簡単に要約すると次のようになる。1)トンネル開通後の効果について、選好構造からみると、利便性、医療システム、近隣へのアクセス、観光レジャなどに効果があるとの評価が高かった。2)地域での生活環境の満足度は、防災水準、交通、情報、非公害、風紀性水準などが比較優位の立場にあることが分かった。3)これを踏まえて、トンネル開通後の生活環境改善に対する選好性は、保健水準、消費水準、娯楽性水準に著しい改善がみられたことが分かった。4)最後に、ファジィ積分による総合評価であるが、個々の評価項目の加法性によって、総合評価値を再現することは難しく、総合評価値は、それらの相乗効果が大きく寄与していることが分かり、ファジィ積分による評価モデルの適用可能性が大きいことが明らかとなった。
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