山地斜面に散布された農薬の河川への流出がどの程度であるかを知るには、様々な降雨のパタ-ンにより農薬がどのような流出経路で、どの程度の速度で移動しその結果ある降雨継続時間にどれくらいの距離を移動するかを知る必要がある。農薬の移動速度、移動距離を定量的に表現する際に考慮すべき因子の一つに農薬の輸送過程における土壌への吸着反応(吸着の程度)がある。吸着反応は土壌中の農薬の挙動を最も大きく支配する因子であると言われている。そこでもし土壌と農薬をタイプ別に適切に指標化を行い吸着の程度を表すことができれば、農薬の移動距離を簡単に算定する農薬の移動モデル式の作成が可能と考えられる。 そこで今年度は農薬の移動を支配する遅滞因子と考えられる吸着反応に重点を置いて以下のような実験と考察を行なった。 (1)農薬の土壌吸着特性について(2)農薬の移動モデル式について(3)赤外線吸収スペクトル(1R)による土壌の吸着特性の総合指標化について。その結果、次のようなことが明かとなった。 (1)土壌に対する農薬の平衡吸着量は土壌のタイプによって大きく変化しない。(ヘンリ-の吸着係数の最大値が最小値の1.5倍程度) (2)土壌の農薬吸着能をIRスペクトルにより総轄的に評価し得る可能性が認められた。 (3)分散を考慮しない移動距離算定式により農薬の平均的な移動距離を予測することが可能である。その結果24時間降雨継続時間では溶解度5〜40ppm程度の農薬の梅動距離は高々0.54(m)一般的に0.1〜0.2m程度であると推測される。
|