北国においては、降雪や積雪の汚染とその自然環境への影響が深刻な社会問題となりつつある。雨と同様に、大気を降下する雪(降雪)にも大気中の微量な有害物質が混入し、さらに地上に積もった雪(積雪)には人間活動によって廃棄されるゴミをはじめさまざまな有害物質が混入し、汚染はさらに進行する。このような汚染した雪は、春先に一度に溶けて、水や土壌環境に影響を及ぼすことになる。実際、雪の汚染による山地湖沼・小河川の富栄養化や都市近郊水域での有機汚濁や微量金属汚染が観察されている。本研究は、上記の認識のもと、水域環境の汚染制御あるいは水資源としての降雪利用という立場から、降雪と積雪の汚染の実態と汚染機構、そして汚染物質の融雪水への輸送(流出)機構を明らかにすることを目的とした。さらに、積雪の汚染制御方法についても検討を試みたものである。結果として、積雪は、大気経由のほか、道路粉塵や生活関連の廃棄物が多量に混入して著しく汚染していること、これらの汚染物質は主に固形物質からなり、これには有機物質、栄養塩そして重金属元素がかなりの濃度で含まれ、環境への影響を無視できない範囲にあることがわかった。汚染機構の特徴として、積雪はそのトラップ機能によって汚染物質が高濃度になること、局所的には道路粉塵の飛散の影響が大きいが、広域的な微細粉塵の拡散による影響も大きいことがわかった。また家庭系の廃棄物の積雪への投棄を無視できないことがわかった。このような汚染した降雪や積雪の融解による水系汚染制御に関しては、汚染物質発生源での発生量削減の努力のほか、除雪対策が密接に関連していることがわかった。汚染雪の分別除雪と処理、雪捨て場での汚染物質の流出防止対策などが望まれる。研究はまだ緒についたばかりである。個々の汚染物質の挙動と環境影響、発生源防止対策の具体化、除雪の効果的な方法などをについて継続して調査する必要がある。
|