本研究では、不飽和土壌中での硝酸性窒素の移動速度を、水みち流れと蒸発による移動に着目して、実験、および現地地下水水質観測により検討している。本年度の検討結果は以下の通りである。 1.対象地域の地下水硝酸性窒素濃度の変動 対象地域の地下水硝酸性窒素濃度の季節変動、降雨後の変動を観測した。その結果、水道水源としてポンプ取水している地下水の季節変動が被圧地下水に比べて大きいことを示した。この地下水では、雨の少ない時期に硝酸性窒素のモル濃度比が小さい傾向を示した。また、降雨に対する水質応答の早さは季節等により異なっていた。 2.水みち流れによる移動 土壌中の徴小空隙を模した装置で、水分条件、降水条件が水みち形成に与える影響を検討した。その結果、水みち形状のフラクタル次元の測定が影響の大きさの検討に有効であること、重力と毛管力の和、初期水分条件が水みち形状に大きな影響を与えることを示した。 3.蒸発による移動 不飽和土壌カラムを作成し、温度、湿度を制御した条件で蒸発による移動を検討した。その結果、蒸発初期には移流による表面への硝酸性窒素の集積が盛んだが、ある程度乾燥が進むと移流による移動が止まり拡散の影響が現われてくることを示した。また、粒子径が小さいほど表面への集積が大きいことを示した。 なお、最終年度にあたる平成4年度は、実験結果に基づくモデルシミュレ-ションにより、現地観測結果をどの程度説明できるが検討する。
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