本研究では、不飽和土壌中での硝酸性窒素の移動を、水みち流れと蒸発による移動に着目して、実験、および現地地下水水質観測により検討した。水みち流れの機構については平成3年度にある程度解明できたので、平成4年度は、現地地下水水質観測の継続、およびより複雑な条件での蒸発移動の実験を主に行った。本年度の検討結果は以下の通りである。 1.対象地域の地下水硝酸性窒素濃度の変動 本年度の観測では、昨年度よりも集中的な観測を行い水質の日単位の変動を調べた。その結果、季節変動では昨年度と同様に硝酸性窒素の12月からの増加に加え、NH_4^+、pHの変動も観測できた。また降雨の影響についてもより顕著な例を観測できた。さらに、各井戸水の関係が陰イオンの濃度比である程度判定でき、類似の井戸水では水質変動も対応していることを示した。 2.浸透と蒸発による移動実験 不飽和土壌カラムを作成し、温度・湿度を制御した条件で蒸発による移動を検討した。本年度は、降雨を断続的にすることにより、より実際に近い条件での蒸発の影響を検討した。その結果、降雨間隔が長いときには蒸発の影響が現れ、同じ降水量でも断続的降雨では硝酸性窒素の移動が少なくなることを示した。 3.土中移動のモデルシミュレーション 実験結果に基づき、浸透と蒸発による移動を確率過程として表現するモデルを作成した。このモデルを用いたシミュレーションにより、観測・実験結果を定性的に再現することができた。
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