本年度は、「より良い気候環境創造のための土地利用計画のあり方」を調べる目的で、昨年度に開発した熱輸送モデルを用い、都市の緑被率の増加、環境水面(水田、水路、人工池など)率の増加等の都市のあり方が、地域の気温分布にどう影響するかを調べた。さらに、人工熱源の気温に対する直接的効果がどの程度であるかも明らかにした。 都市の緑被率を上げることが、地域の最高気温の軽減に寄与する度合いを定量的に明らかにすることを試みた。地表面の熱的性質の違いは、アルベドα、ボーエン比β、地表の長波放射率ε、粗度長z_oで表した。1985年の土地利用を基本にして、それから各々の都市域メッシュの緑被率(森林あるいは草地)を変化させた。得られた結果は、(1)都市の緑化によって、日最高気温は減少する。むろん、緑被率が大きいほど気温減少も大きく、例えば、都市の緑被率を50%にすると濃尾平野の日最高気温の減少は最高で約2°Cであった、(2)興味深い点は、気温減少の度合いが、領域内どこでも同じではなく内陸ほど大きいことであり、海風による熱の輸送が気温のバックグラウンドとして重要であることを示しており、沿岸都市部の緑化を進めることが、内陸の気候緩和にもつながることを意味している。 次に、名古屋市域に開水路、人工池など環境水面を設定したときの気候緩和効果について感度解析を行った。その結果、名古屋市内の環境水面比を現況の約7%から25%にすると、最高気温は0.7°C程度さがり、その影響は名古屋の北部にも広く及び、地域特有の流れに基づく波及効果を示した。また、この25%の水面比に対して名古屋市全域のバックグラウンド気温が約0.4°C下がることになるが、これは人工熱源の使用を全て止めたのと同様の効果を持つことを意味し、夏期のエネルギー使用の削減にとっても大きな意味を持つことを示唆した。
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