研究概要 |
本研究では,フェライト化処理の指針を得るだけでなく,処理の可能性を広げるために,フェライト化反応の妨害物質であるリン酸を含有する重金属廃液に対して,規定の鉄量を加える通常処理法,その鉄量より多量に加える鉄増量処理法,鉄増量処理と同量の鉄を加えるが2回に分けて加える2段階処理法の3種のフェライト化処理法を試みた。処理評価の指標としては,フェライト粒子の飽和磁化,粒度分布及び密度を選び,それらと重金属ならびに妨害物質の種類及び濃度との関係を詳細に検討するとともに,溶出試験結果についても評価を行った。その結果,フェライト化重金属処理法における妨害物質であるリン酸の影響について,いくつかの興味ある結果が得られた。 カドミウム-リン酸混合系から得られたフェライトスラッジの飽和磁化は,リン酸濃度330mg/lを超えると急激に減少する。溶出試験結果から,2段階処理より得られたフェライトスラッジは通常処理及び鉄増量処理より得られたものに比ベて,カドミウムの溶出濃度が低いということが明らかとなった。このことは,2段階処理を行えばマグネタイトによる粒子表面上への被覆の効果があることを示唆する。すなわち,カドミウムの溶出は,フェライト粒子表面に吸着した水酸化カドミウムに起因すると考えられる。リン酸濃度の高い廃液に対しては,pH調整による前処理によりリン酸の約70%が除去でき,その後得られたフェライトスラッジの飽和磁化は前処理を行っていないもにの比ベて非常に高く,再利用可能な非常に安定なスラッジの生成がみられた。フェライト化処理後固液分離して得られた処理水に含まれるカドミウム濃度は,中和凝集沈澱法から得られたものに比ベて非常に低く,高pH領域で高い溶解度を有するカドミウムなどの重金属の処理に対してもフェライト法は非常に有効であることがわかった。
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