日光東照宮の国宝および重要文化財の全建物の劣化状態について調査を行い、その調査結果を基に劣化箇所の詳細を調べ、あわせて、同時代の建物数例との比較を行い、劣化の原因と程度を考察した。 1.劣化の原因は自然環境の影響、材料の耐久性に対する特質、人的影響によるものに分けられ、自然環境、人的影響、材料の耐久性に対する特質の順で大きな要因となっている。 2.主要使用木材の材種については、当初、林材の専門家への鑑定依頼を考えたが、大多数の部分については、結構書、修理報告書等に記録があり、材種の数も限られ、専門家を煩わせず判定できた。 3.劣化の建物別比較、部位別比較、自然環境別比較、仕上げによる比較を行い、劣化状況については写真による調査記録の作成を行った。 (1)建物別の違いは、自然環境、構法、材料の違いによっているがそれぞれの建物の劣化の程度を把握する資料となる。 (2)部位別に見ると、内よりは外、上よりは下の部位の傷みが激しい。ただし、軒先・妻の破風などは、上部においても比較的劣化が進行している。屋根に雨漏りなどがあった場合は小屋裏でのくされが生じている。また、扉の軸、輪蔵の軸のように動く部分は損傷が見られる。 (3)構法別では、土台の有無により柱の損傷に差が見られる。 (4)材料別では、桧の方が欅より耐久性が見られるが、比較的陽当りがよく乾燥している場所では大きな差はない。 (5)仕上げの有無による違いは、一般的に塗装があった方が良い状態が保たれている。ただし、塗装の質の悪いものや手入れの悪いものは無塗装以上に劣化を進化させている。 4.保存・耐久性向上のための考察を行った。
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