この研究では、観測地震動特性と地盤調査をもとに、震源特性と伝播経路の地盤特性を含めた地震動を波動伝播理論と確率論を用いて作成し、この地震動を規定する物理量を変動させて、過去の大きな地震の被害分布を実現させる条件を探り、0.1秒から10秒程度までの周期帯域をカバ-出来るような構造物の耐震設計のためのより合理的な入力地震動モデルの作成を目的とする。 平成3年度は以下のように、大阪府泉佐野市に造成されたりんくうタウンを対象にその耐震設計用地震動予測モデルの作成を試みた。 1.地震動の地域的特性の要因抽出の研究:りんくうタウンに、将来到来する大きな地震動を発生させる断層領域を、過去の観測地震動資料と近畿地方に分布する断層沿いの微少地震エネルギ-の放出状態から特定する試みを行った。その結果、耐震工学上重要な断層領域は、中央構造線と南海トラフであり、この2つの断層領域から将来発生する耐震設計用地震動を作成することが重要であることが明らかになった。 2.耐震設計用地震動予測モデル作成の研究:想定されたりんくうタウンの地震動特性を予測するために、りんくうタウンの建設地域で地下60〜150m近くまでのボ-リング調査と、同時に軽い爆破による地盤探査を行い、りんくう建設地の地盤の卓越周期、Q値、層構造等の地盤特性を把握した。また、過去の観測地震動資料から、上記の2つの断層領域からりんくうタウン建設地までの地震波の伝播性状の評価を行った。これらの資料をもとに計算されたりんくうタウンと断層領域とを結ぶ伝播経路地盤のグリ-ン関数と震源での破壊過程を実現する震源モデルから、りんくうタウンに建設される構造物の耐震性を予測する入力地震動モデルを理論的に 作成した。
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