1.鉄筋コンクリート薄肉偏平円筒シェルに積雪荷重が作用した場合の力学性状を調べることを目的として、小型模型による破壊実験を行った。スパン、長さは全て80cmで、厚さ8mmのマイクロコンクリート製試験体を用い、実験パラメータとして初期不整と荷重モードおよび偏平度を採用した。即ち、初期不整量は0.0、0.4、0.8cmの3種類、荷重モードは積雪の状況を考慮して、全体荷重と中央のみの部分荷重の2種類、更に、偏平度については曲率半径70、80、95cmの3種類とし、これらの組み合わせによる8体の試験体について実験を行った。 2.実験の結果、以下のことが明らかとなった。(1).初期不整の量が大きくなるに従って、円筒シェルの剛性、耐力は低下する。特に、中央部分荷重に比べて、全体荷重の場合の不整による耐力の低下は著しく、0.8cmの不整を与えた試験体では、その耐力は不整なしの試験体の12%程度にまで低下した。(2).荷重の乱れによる剛性、耐力の低下も大きく、不整なしで中央部分荷重とした場合、その耐力は全体荷重で0.8cmの不整を与えたものと同程度まで低下した。(3).偏平になるに従い、剛性、耐力は低下するが、今回実験を行った程度の偏平度の違いでは、その影響は荷重の乱れ等の他の要因による影響に比べて小さい。(4).初期不整や荷重の乱れが存在する場合、その部分でかなり大きな曲げモーメントが発生し、剛性、耐力が低下する。(5).不整なしとした試験体でも、実際は製作誤差により、0.1cm前後の不整を生じており、実験値は線形理論により求めた座屈荷重に比べてかなり低い値となった。(6).初期不整を有する試験体について有限要素法による解析を行った結果、実験値とよい一致を示し、その性状を解析的に把握することができた。
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