研究概要 |
パネル耐力比の違いによる角形鋼管柱・H形鋼はり接合部の弾塑性変形性状の相違を明確にすることを目的に,パネル耐力比が0.6,0.8,1.0,2.0となる接合部をもつ4体の十字形試験体の単調加力実験を実施した。また接合部をパネルとパネル周辺枠組に分離して別々に評価する手法の適用性を検討するために,パネル周辺枠組の抵抗のみを求める目的で,接合部パネルを除去した同種の4体の試験体についても併せて実験を行った。以上の実験の結果,次のことが明らかになった。1.接合部パネルに貼付したロゼット・ゲ-ジの測定値から求められたせん断ひずみ度と,接合部パネルの上下端の相対変位から計算されたものとがほぼ等しくなるので,接合部パネルは純せん断変形すると考えられる。2.接合部におけるパネルモ-メントとせん断ひずみ度の関係は,素材試験結果より求められる接合部パネルの荷重・変形関係に,パネルを除去した試験体の実験結果より求められる周辺枠組の関係を加えることによりほぼ推定できる。3.弱パネル型接合部を有する十字形試験体の荷重・変形関係は,接合部の荷重・変形関係として実験により得られた弾塑性のものを適用すれば、柱及びはりを弾性体として取り扱ってもほぼ良好な推定値が得られる。4.弱パネル型の試験体では,実験終了時まではりはほぼ弾性状態であると考えられる。5.スカラップ近傍のはりフランジにおいて,内側のひずみの方が外側のものより大きくなる。6.接合部近傍のはりウェブのひずみ分布は,はり理論とは逆方向になる場合がある。今後は,繰返し加力実験を行うことにより,スカラップの存在に起因するはりフランジの破断について検討する予定である。また,平成4年度に計画しているコンクリ-トスラブ付き十字形試験体の加力実験についても,パネル耐力比としては,0.6,0.8,1.0,2.0の4種類を採用する予定である。
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