研究概要 |
鋼材の脆性破壊は通常実験室で再現されるような極低温で起こるものではなく、0℃近傍の冬季の気温中で発生している。この原因は平面ひずみだと考えられているが、BSでは平面ひずみ条件として試験体の板厚と幅との比B/Wが5を越えなければならないとしている。実際の脆性破壊事故例ではそれほど低い外気温で発生したものではなく、むしろ大型鋼構造物に事故が集中していることから考えても、部材の寸法効果の影響が最も大きいと考えられる。そこで、これまで試験体の寸法効果を実際的に明らかにするために、COD曲げ試験体のB/Wを1/2,1,3/2,2,5/2と大きくした実験によりノッチ部分が平面ひずみ状態に近づくかどうかに関して、試験体の横収縮率を基準にして研究を重ねてきた。その結果、曲げ試験体のB/Wが5/2では-20℃において横収縮率がほぼ0となり、また破壊形式もへき開破壊であって、この段階で平面ひずみ状態になっているものと判断された。そこで、本研究ではCOD曲げ試験体のB/Wを3,4,5と大きくしていった場合の破壊靭性値及び横収縮率等を検討することとした。この実験の結果、B/Wを3,4,5と大きくしていった場合、0℃では横収縮率がほぼ0に近くなり、また破壊形式もほどんどがへき開破壊であり、平面ひずみ状態とみなしても差し支えないが、20℃においてはまだ横収縮率が0という状態ではなく、破壊形式も一様ではないため平面ひずみ状態であるというにはまだデ-タが不足している。常温域での脆性破壊発生にはまだ定量的なデ-タが必要であり、実構造物を想定した来年度の実験テ-マである柱・はり溶接合部の試験体を使っての実験結果を待って判断を下すべきだと思われる。
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