昨年行ったCTOD試験の結果、板厚40mm程度の極厚鋼材を用いてCTOD試験体の板幅と板厚の比B/Wを通常の0.5から1、1.5、2、2.5、3、4、5という具合いに大きくしていった場合、板幅が大きくなるにつれて塑性変形の拘束効果が生じてきて、次第に平面ひずみ状態に移行していくことが確認された。B/Wが2程度までは40キロ級と50キロ級とに材質上の相違はほとんど見られないものの、B/Wが3を超えて大きくなると材質の相違もかなり明確となり、変形能力が若干小さい50キロ級の場合は常温域でも破壊が脆性的となりB/Wが5になると常温域でも脆性破壊を生じているし、横収縮率はほぼ0となる。40キロ級の場合は常温域で脆性破壊、延性破壊の両方が観察され、変形能力の差が現れてきている。横収縮率に関しても40キロ級は50キロ級に比較して若干高い値を示すが、その値は1〜2%程度であり、両鋼種ともほぼ平面ひずみ状態であると判断される。 今年度はこの成果を踏まえて実大の溶接接合部の試験体を使用して、実際の破壊様式が鋼材の板厚の違いによりどの様に変化するかということを実験により確かめた。使用した鋼材は昨年と同様にSS400、SM490の2種類であり、試験片は45mmの厚板をはさんで28mm、36mm、40mmの鋼板をレ形突合せ溶接した溶接試験体を用いた。この溶接試験体を用いた引張試験では間にはさんだ厚板の拘束が非常に大きく、試験片の両端部が変形し、中央部は余り変形しないという通常の引張試験と逆の結果が出ている。また、SS材の場合は破断は母材で起こるケースが多いが、SM材ではほとんどが溶接部で破断し、脆性破面が観察される。この脆性破壊は試験体全体の塑性変形がかなり進展し、最大耐力の近傍で発生していて、常温域での脆性破壊が確認でき、極厚部材の平面ひずみ状態が脆性破壊を引き起こす原因だと考えられる。
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