東京都心部に立地する非マンション系区分所有建物の実態の解明と、それが住宅および都市政策に与える影響について分析した。調査は東京都千代田区、中央区32丁町目の街区を対象として全区分所有建物524棟について登記簿調査、建物利用調査、区分所有者325人に対するアンケート調査等を実施した。また、市街地再開発事業建物10件を対象として、権利変換計画書閲覧や組合ヒヤリング等により再開発ビルにおける区分所有の実態と可能性を調査した。以下、分析・考察の結果を述べる。東京都心部において非マンション系区分所有建物は増加の一途にあり、千代田区では全建物床面積の3割を占め、棟数ではマンションの約10倍に及ぶ。区分所有は建物建設後に発生するものが2割あり区分所有の可逆性も含めて今後の検討を要す。区分所有建物の特性は小規模、少区分、少所有者というミニビル的性格を共通にもつが、千代田区の業務街のように大規模な区分所有建物が支配的になる地域もあり、その二面的性格と立地の地域性が明らかになった。その中で狭小敷地の共同化を図る建物の共同建設も3割近くを占め、区分所有を通して建物の更新や土地利用の高度化が図られている。また、区分所有の要件である構造上の独立性と利用上の独立性をアクセス空間のタイプ分析により、アクセス空間の狭小性と建物を共同利用する面での問題を指摘した。区分所有建物は主として事務所と住宅に利用され、都心居住に重要な役割を占める。区分所有建物の事業者である区分所有者の動機は所有形態を明確にすることにあり、その管理においてもマンションとは異なる性格が解明された。市街地再開発事業建物における従前権利と従後に所有利用する空間との相関の解明、無隔壁区分所有の実態、そこでの所有と利用の調整実態を解明した結果、従来の大規模再開発とは異なる区分所有ビルの連合としての再開発事業手法の可能性が浮かびあがった。
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