研究概要 |
日本の都市空間における特質のひとつに,建物間の空隙があげられる。従来、都市空間を形態的な側面から分析する際には,建物を「図」とみなし、空地は明確な機能を有していない限り単に「地」の部分として扱われていた。本研究はこれまで積極的に取り上げられることが少なかった「地」の部分,すなわち都市空間の空隙自体を直接対象化し,形態学的・幾何学的に考察することによって,日本の都市空間の持っている特性を抽出しようとするものであった。 具体的な実績として、空隙の幾何学的な定義と計量的および位相的な性質を明らかにし、形態学的な分析手法とするため「最大空円」の概念で都市内空隙の概念を明解化した。その際重要視されたことは、現実の都市空間の空隙の形状やパタ-ン,場所的な差異性・同質性,用途構成,スケ-ルによる類型化等について実証的な考察を行うことを可能にするため「空隙」をパラメトリックに定義したことである。すなわち,空隙という領域が直観的な認識とごく自然に対応づけられ,かつ,通常の密度指標と数理的に関連づけられるよう留意した。 これらの概念の具体的な適用を行い日本国内に存在する都市・集落に関する関発の程度と「空隙」との関連性を見る目的で、平成4年1月に熊本・福岡の現地調査を実施した。採集資料は踏査した地域のビデオ録画,現地で入手した大縮尺都市図,多数のスチ-ル写真等であり,現在,都市平面形態の観点からのデ-タベ-スを構築中である。 先に導入した幾何学的概念の中心的課題である「最大空円」の方法をこのデ-タベ-スに適用し,そのフィ-ルドバックとして,都市の空隙に関して提案した初期的概念の高次化を進めることが今後の課題である。
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