横浜市市街地環境設計制度の適用事例のうち、駅前周辺の業務地域に集中して建てられた地域の景観上の評価と利用状況を調べるため、公開空地を持つ30例、制度を適用していないが壁面後退により作られた空地8例、空地を持たない事例7例の計45事例を対象とした調査分析を行った。 1)公開空地の利用動線については、事務所ビル系の事例を対象としているため「通過」が主な用途となるが、隣地が歩道状公開空地を持たない場合や敷地境界線上に植樹等が設置されている場合は、公開空地の利用が大きく減少する。また、広場状空地を持つ敷地においては、頻繁に「滞留」がみられるが、それに応じた休憩のためのスペースの事例はまだ数が少ない。一方、通り抜け状の公開空地は、その作られ方は隙間の状態であるものの、歩行者の利用頻度が非常に高く、街区のパスとして有効に使われている。 2)歩行ルートを設定し被験者に歩いてもらう心理実験では、評価尺度を説明変数とした因子分析の結果、3つの因子軸を得た。1軸は「快適なー不快な」の快適性因子、2軸は「変化的ー規則的」の変化性因子、3軸は「静的ー動的」の活動性因子と解釈できた。これらにより公開空地を持つ事例はほぼ原点に重心を持ち、壁面後退の空地が「単調」へ、無空地の事例が「無秩序」へと評価されているが全体的には公開空地の平均評価は低く、いまだ豊かで秩序ある公開空地の事例は非常に少ない。 3)公開空地と壁面後退による空地の比較では、「統一感のある」「連続感のある」など空間を結合する評価が特に好まれている。また心理評価に影響する空地の形状として、連続している公開空地は快適性評価が特に高い。このことが、公開空地は隣地とも連続していくことで、はじめてまとまりをもち、高い評価を得ることが出来る空地であり、個別の敷地主義の計画では効果が半減することを示している。
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