研究概要 |
東京の山手線および大阪環状線について調査・分析を試みた平成3年度までの研究では,東京・大阪の両環状線は実際よりも円に近い形態として認識されていることが判明した。また,こうした地理的イメージの形成には,幾何学的な概念図形が重要な役割を果たしていることを示した。しかし,こうした概念図形は文化的な背景のもとで形成されることから,文化の異なる場所では概念図形自身が異なっていたり,イメージ変形のメカニズムが異なっているという可能性もある。そこで,本年度は,このことを比較検証するための調査として,大韓民国ソウル特別市の環状線(2号線)を対象とし,文化的背景を異にする韓国人と日本人(何れもソウル市に在住の人)に,過年度の同様のイメージマップを用いた調査を実施した。具体的な比較分析の前に,これまでと同様の手続に従って,概念図形の抽出とイメージ変形の計量化を行った。得られた主な結果は以下のとおりである。 1.ソウル市在住の韓国人(60人)と日本人(32人)を対象にイメージマップ調査を実施した結果,東京・大阪での調査結果と同様に,2号線は横長の楕円状の形態として,実際の形態を非常に単純化した概念図形のもとで理解されていることが判明した。 2.前年度に定義した真円度(円の形状にどれ程近いかを表す指標)を用いて,実際の路線形態とイメージ上の形態とを比較検討した結果,各被験者のイメージは実際の形態よりも円に近い形態となっていることが判明した。この結果も,前年度までに得られた調査結果に一致している。
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