研究概要 |
過年度までの調査・分析では,東京の山手線や大阪の環状線の路線形態は、実際よりも円に近い形態として認識されていること,また,こうした地理的イメージの形成には,幾何学的な概念図形が重要な役割を果たしている可能性のあることが判明している。 この結果を受けて,ものの理解の仕方に及ぼす文化的な背景の差異の影響について検討するため,大韓民国ソウル特別市内の環状線2号線を対象として,日本人と韓国人の路線形状の認識に関するイメージ調査を実施した。引き続き,過年度と同様のイメージ分析をとおして,日本人と韓国人の認識構造を相互に比較分析し,文化的枠組みが地理的イメージ形成に及ぼす影響について検討した。その結果,日本人と韓国人の路線形状の認識構造には大きな違いは検出されなかった。すなわち,本研究で調査分析した環状の鉄道路線に限って言えば,文化的な枠組みにはそれ程影響されない幾何図形のような普遍的なものが模式図として用いられていると言える。 しかし,どの様な概念図式が利用されるかは,対象に依存すると考えられるので,他の都市構成要素について言えば,文化的枠組みの影響が見られる可能性があり,この点に関しては今後の課題である。
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