近年の都市のみに限らず住民の、老齢化、小家族化が進行している。従来は、地縁関係、血縁関係で執り行われていた、人の死にけじめをつける“葬儀"を中心とする一連の営みが崩壊、変質化する兆候が現れてきている。 その一つが死を迎える場所として“住まい"から“病院"への動きである。ついで“葬儀"の場所も“住まい"から“葬儀場"へと、さらに“家族墓"から“個人墓"への流れが見えてきている。今まで住み続けてきた地域への乖離であり、それを支えて来た人の絆の多様化であろう。 本研究は死者に対する儀礼の中で葬儀に注目し、それが執り行われる場所について、地域社会や都市生活の変化をふまえてその在り方を考察したものである。 現在の動向を新聞に掲載された死亡記事を時系列や地域別の分析をすることにより明らかにした。葬儀場についてその設置者を対象にアンケートをもとにそのねらいを分析した。葬儀場の建築的な要素および利用上からの要求を既存の資料をもとに考察した。さらに全国で評価の高い施設について現地調査を行い、これからの課題を抽出した。 その結果、死亡場所、葬儀場所が自宅から施設へと移行していることが明らかになった。専用施設の建設の動機は時代の流れに対応するためで、葬送全体にわたる総合性と多目的な利用を指向する傾向が認められた。 まとめとして、葬儀用の施設の設計上の課題を、それらの施設を利用者が選択する際の葬儀施設の評価の観点から整理を行いその試案を作成した。
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