都市高令者の余暇活動の内容が、従来の老人憩いの家や老人福祉センタ-などの高令者専用施設では十分に対応できないほど多様化・多層化している現状を把握するために、福岡市の都心商業地区である天神地区において、各地域から来訪し一定時間を同地区で過す常連の高令者の活動実態を調査した。都心商業地区を調査対象地として選定したのは、同地区には商業施設、娯楽施設、情報・展示施設など余暇活動に適した諸種の施設が集積し、高令者を含む多世代の交流の可能性があり、研究課題に示した多世代交流型の余暇活動施設の在り方を論じる上で格好の対象と認識したからである。調査は、同地区にある18の公共休憩所での定点観察、男性61名女性38名を対象とする尾行追跡調査、およびアンケ-ト調査の3種類の調査を実施した。この調査の結果、以下の点が明らかになった。(1)常連高令者の年令分布は男女を通じて巾広いが、後期高令者(75才以上)は男性に多い。(2)男女共に平日に来訪する傾向が強い。(3)来訪ひん度は男性週4〜5回、女性週2〜3回が多い。(4)行動領域の固定化の傾向がみられ、高令者間の〓み分けがなされている。(5)一般高令者に比べて一回当りの休憩所滞在時間が長い。さらに、これらの高令者は、その行動範囲、単独行動か集団行動か、主な活動内容の3つの指標に基づき類型化すると、(1)ひなたぼっこ、(2)ストリ-トウォッチャ-型、(3)タウンウォッチング型、(4)対人接触欲求型、(5)教養娯楽・情報享受型、(6)広域行動型、(7)会話型、(8)ショッピング型の8つの類型に分類でき、それぞれ特有の行動パタ-ンをとることを解明した。これらの類型は、単に行動パタ-ンの差異を示しているにとどまらず、それを通して、都市高令者の余暇活動要求が多層化している実態とその要求内容をみてとることができる。
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