保存地区として新潟県佐渡郡小木町宿根木の調査を平成3年8月.明治大学大学院生ならびにゼミ生20名とともに実施.4棟の住居の実測図を作成し.伝統的建造物群保存地区に選定された経過ならびに住居に関する意見についてヒアリングを行った。この地区の保存については行政および居住者の一部に極めて熱心な推進者がいる反面.根強い反対意見が今なお消えていない。意見を集約すると次のような特色が伺える。 (1)保存推進者・反対者ともに.離存者の増加・高齢化を認めており.保存がそれをくいとめる契機となることをそれほど期待していない。この集落の構成上観光開発には自ら限度があることを誰もが承知している。 (2)反対者は女性に多く.発言はしないが保存に疑問を感じている主婦は更に多いと感じられる。その理由は.住居の住みにくさ.暗さ.汚さであって.都会的住居に対する憧れがかなり強い。 (3)単なる保存でなく.利便性の向上の実現が強く求められている。 これらの住民の意向は.今後の事業の進め方に修正を迫る要素といえよう。 一方再開発地区として東京都荒川区汐入の調査を.平成3年8〜10月の間.学生約30名とともに実施した。5班に分ち.4つのブロックの悉皆調査ならびに空家となった古民家の実測調査がその内容であって.ブロック調査の際住民のヒアリングも併せ行った。この地区では地主・借地人・借家人という土地・建物の所有関係がただちに住居に関する意見や希望に反映する。地主を対象とした権利交換はほぼ完了しているが.借地・借家人と事業主体との交渉は現在なお継続中のものが少なくない。その背後にある問題点については次年度の調査に委ねる。
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