研究概要 |
今年度の目標は、京都臨済宗寺院の近世の景観の復原に関わる資料の調査の資料・収集であった。東福寺・天龍寺・妙心寺については既収集資料の整理をおこない、相国寺に関しては新たに関係資料の調査を実施し、境内地の構成を知る手掛かりになるような多数の古絵図や文書資料を写真に撮影することができた。これらを用いて、試験的に近世の相国寺境内の復元を試みたところ、2500分1縮尺の都市地図上におとしうる精度で,江戸中期の境内地図を作成することができた。現在のところ、江戸中期以前の詳しい境内古図は発現されないので、中期以前の境内景観の復原は文書資料をもとに行うことになるが、室町時代の唯一の相国寺塔頭境内図である普広院古図や相国寺境内関係の記述が散見される「蔭涼軒日録」などを用いることによって、室町時代後期の状況までかなりの程度復原できる見通しをたてている。 妙心寺は境内地の発展過程が複雑であるので、とくに意を用い、東京・岡山・山口などに出張して関係新資料の発掘につとめた。また、寺内のいわゆる四本庵と称される主要塔頭の所蔵史料の調査を行い、関係史料の発掘につとめた。今年度は四本庵のうちの龍泉庵・東海庵・聖澤院を調査することができ、かなりの成果をおさめることができた。これらと本山所蔵史料を用いて、妙心寺が最後に伽藍地拡大を行った以前の、伽藍地の形状をほぼ復原することができた。これは論稿にまとめ別記の雑誌に近く発表の予定である。 平成4年度は、まだ未調査である南禅寺の関係史料の調査を行いたい考えである。また、東福寺・天龍寺について、さらに調査を重ねて近世期の境内の景観復原を試みる予定である。
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