研究概要 |
「研究計画調書」において立案した研究計画に基づき,調査研究を行った結果,以下のような実績をあげることができた。 1.現存する初期の官立産業建造物の分析 前年度の調査によって明らかになった現存建造物について,これまで研究的蓄積の少なかった建造物について,現地での調査を行った。調査対象は・生野鉱山・佐渡鉱山・高島炭坑の3箇所であり,いずれも工部省の所管による鉱山である。生野・高島については,当初の図面文献資料を収集した。更に佐渡鉱山においては,文献資のみならず,現存遺構についての実測図の作製を行っている。これによって初期の官立産業建造物,特に鉱山では,単に西洋的施設を建設したということに留まらず,当時の最先端の技術が施設建設に使用されていることが明らかになった。 2.技術移植方式の系統的把握 生野・佐渡 高島の各官営鉱山において,初期にどのような技術移植が行われたかを中心に調査を行った。生野においては コハニーを始めとする雇外国人が建設した建造物について,その形態の分析と使用技術の考察を行った。高島炭鉱は幕末からすでに 鍋島藩・グラバーによって開発が行われた鉱山であり,我が国において最初期に建設された堅坑(北渓井坑)の使用技術をとり上げ,調査を行った。佐渡鉱山に関しては,最初期のガローを始めとする技術移植が大島高任を中心とする邦人技術者による開発へと,どのような過程で行われたかについての詳細な調査,研究を行った。 以上,1.2.の研究成果により,官立産業施設の具体像と,技術の移植,定着のプロセスが明らかになった。
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