露天採掘による開発が環境に及ぼす影響、なかでも採掘跡地の景観変化と周辺地域の微気象変化を、開発計画の段階で予測・評価できる露天採掘シミュレ-ションシステムを確立することを目的として研究を行った。本年度に得られた成果を要約すると以下の通りである。 1.採掘進展に伴う景観変化の予測方法として、パ-ソナルコンピュ-タを用いて、メッシュ標高デ-タから3次元数値地形モデルを作成し、タイル法でディスプレイする方法を確立した。これにより、様々な採掘形態や眺望地点を想定して、採掘進展に伴う景観変化を開発計画の段階で予測することが可能となった。 2.景観評価は、コンピュ-タグラフィックスによりシミュレ-トした原石山の改変状況を、現況写真にモンタ-ジュしてスライドを作成し、これらを用いて評定尺度法による実験を行った。 3.計量心理学的評価手法に基づく統計処理を行うことによって、景観評価を定量的に扱うことが可能となり、開発計画の段階で景観的に許容できる開発限界を推定することが可能となった。 4.採掘進展に伴う地形改変が周辺地域の微気象に及ぼす影響については、3次元数値地形モデルによる鳥瞰図から、風向の変化や風の流れの様子をビジュアルに予測することが可能となった。 5.16方位別の地形傾斜の偏差を求めることにより、地形因子による方位別の風向頻度の計算が可能となり、地形改変による卓越風向の変化や風向頻度の変化を定量的に予測できるようになった。 以上の結果をもとに、露天採掘が環境に及ぼす影響が極力小さくなる範囲で、可採鉱量や生産コストなどの生産性をより大きくするためには、どのような開発を行うことが最も合理的であるかを検討できるシミュレ-ションシステムの確立を現在進めている。
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