研究概要 |
本年度の研究遂行に当たっては超磁歪特性の顕著な立方晶ラーベス相化合物TbFe_2に注目し、基礎的観点から(1)遷移金属元素置換効果を調べ、更にこの成果をもとに実用的観点から(2)アモルファスの合成、結晶粒微細化による軟磁気特性改善を試みた。以下にその結果を示す。 (1)Tb(Fe_<1-X>M_X)_2化合物(M=Co,Ni,Mn,Cr,Ti,V)の超磁歪特性 TbFe_2では室温の磁歪常数λsは1640×10^<-6>であるが、置換量の少ないX=0.05-0.1ではλsは大きな変化を示さずλs=1500-1700×10^<-6>であった。一方x>0.1ではいずれの化合物系でも減少し、特にM=Ti,V,Crで顕著な減少を示した。これに対して、素材の軟磁性特性を示すパラメーターである残留磁歪量λRはTbFe_2では1110×10^<-6>と大きいのに対してM=Ti,Cr,Mn,Co各々380、690、620、200×10^<-6>となる良好な結果が得られた。以上からM=Mn(X=0.1)が最も優れた超磁歪、軟磁気特性を示しλs=1400×10^<-6>、λR=620×10^<-6>、抗磁力Hc=3000eであった。この軟磁性は、Mn添加にともなう結晶磁気異方性の低減によると考えられる。 (2)アモルファスの合成、結晶粒微細化による軟磁気特性の改善 金属組織を微細化あるいはアモルファス化することによって、巨視的磁気異方性の低減を試みた。TbFe_2化合物では、急冷速度の増加と共に結晶粒径が減少し、例えば急冷速度V=8m/sからV=32m/sへと変化すると結晶粒径が400から250へと減少し、それと共に抗磁力Hcが2k0eから9000eへと低下した。同様なHcの減少はTi,Niでも観測されたが、M=V、Cr、Mn、Coでは急冷速度と、軟磁気特性の間には相関が見られなかった。 以上の今年度並びに前年度の研究成果をもとに、超磁歪の発生機構と希土類原子環境効果、超磁歪への遷移金属元素dバンドの寄与等に関する検討中である。
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