研究概要 |
正弦波的格子変調を受けた結晶の超格子による反射の数は、測定可能という観点からすると極端に少ないために、その変調構造の解析は回折的手法だけでは困難を極める。Bi_2Sr_2(Ca_<1-X>Ln_X)Cu_2O_<8+>δ(Lnは希土類元素)置換系酸化物もその例である。筆者は、高分解能電子顕微鏡観察および電子線回折実験にもとづいた2種類の分域の規則配列から成る長周期変調構造模型を提唱し、電子線回折の強度分布はその模型による強度分布により説明できることを示してきた。本年度は、平成4年度研究計画に沿って研究は遂行された。 1.Ca元素をLn=Pr,NdおよびTb元素で置換し、変調周期の濃度変化および置換元素が変調周期の濃度依存性に与える置換効果の大小を調べた。その結果、Caの2価とYの3価を基準にとると、Ndは3価、PrとTbは3.2〜3.3価の置換効果があることが明らかになった。Y,NdおよびPr置換系に関する結果の一部は、Acta Cryst.に投稿された。 2.上記置換系の[001]高分解能像に観察され、且つその基本構造の[001]投影の原子配列より期待できない一次元輝度変調をこの系の変調構造の本質を反映したものとして捕え、輝度変調を定量化して記録した輝度分布曲線を解析した。その結果、結晶中の分域の配列は輝度分布曲線より直接決定されることを始めて解明した。この詳細はJ.Appl.Cryst.26,(1993)に印刷中である。 変調構造の変調周期は置換元素の濃度に対して階段的に減少する。その詳細な研究は現在改めて進行中であるが、輝度分布曲線より見い出された全ての分域配列は一次元競合系の基底状態の分域配列に対応することなどが明らかにされている。
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