研究概要 |
12mol%Ce_2含有の正方晶ジルコニア多結晶体(CeーTZP)を1400〜1750℃の温度範囲で加熱焼鈍し,結晶粒径が1.27〜13.8μmの試料を得た。これらの試料について,硬さ測定(室温および500℃),加熱・冷却による変態・逆変態温度の測定,および種々の温度での曲げ試験による応力誘起変態挙動の観察等を行い,マルテンサイト変態にたいする結晶粒径依存の原因を考察した。 結晶粒の粗大化にともない室温硬さは1000Hvから650Hvまで低下した。圧痕のまわりに変態バンドが観察されなかったこと及び応力誘起変態が起こり得ない500℃でも同様の硬さの低下が起こったことより,硬さの変化は結晶粒径自身の変化に依存すると結論された。また結晶粒の粗大化に伴いMsおよびMd(無負荷および応力負荷状態でのマルテンサイト変態開始温度)は顕著に上昇した。これは結晶粒の粗大化にともなう母相の軟化により拘束応力が低下しマルテンサイトの核形成が容易になるためと考えられる。この考え方はエネルギ-的観点からの計算によっても支持された。しかしながら今回用いた試料は結晶粒の粗大化とともに気孔も増大しており,気孔が硬さ等に及ぼす影響が取り除かれていない。現在HIP処理により気孔を潰した試料について硬さの結晶粒径依存性を測定中である。また粒径依存に対する他の説(例えば,熱膨張異方性による粒界応力集中説)もあり今後粉砕試料を用いて粒間の拘束力を取り除いた場合についても実験をおこない,マルテンサイト変態にたいする粒径依存の原因を更に明確にする予定である。
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