研究概要 |
前年度は12Ce-TZPの焼結体についてMs温度と母相の硬さの結晶粒径依存性を測定し,Ms温度と母相の硬さの間に強い相関があることを見いだした.本年度は結晶粒間の拘束力が存在しない粉砕試料を用いて,粉砕粒径や結晶粒径がMs温度にどの様な影響をおよぼすかを調べた. 成果の概要は以下のとおりである. 1.粉砕試料におけるMsおよびAs温度の粒径依存の測定 結晶粒径と粉砕粒径を種々調整した10Ce-TZPについてMsおよびAs温度を測定した結果,これらの変態温度は結晶粒径や粉砕粒径に殆ど依存せず,かつ粉砕試料のMs温度はバルク試料よりも低いことが明らかになった.これらの結果よりバルク試料にみられるMs温度の結晶粒径依存性は,粒の微細化にともなう母相の平均強度の上昇が変態を抑制するためと考えられる.さらに結晶粒界の寡多はマルテンサイト核の数に影響をおよぼさないことも明らかになった. 2.Ce-TZPにおける等温マルテンサイト変態の発見 Y-TZPは200-300℃で等温的にマルテンサイト変態が進行して強度が低下することがよく知られている.この原因として,ZrO_2にZr^<+4>と価数の異なるY^<+3>を添加することによって必然的に導入される酸素空孔が関与していると考えられている.それゆえZr価数が等しいCe^<+4>を添加したCe-TZPでは等温変態は起こらないと考えられていた.しかしながらここで用いたCe-TZPの粉砕試料は顕著な等温変態を示すことが見いだされた.このことはY-TZPの等温変態に関して提唱されている説について見直しが必要であることを示す.
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