前年度において予測した電解鉄中への不純物混入機構の中から、本年度は電気化学的に共析が予想されるNi、Co、Cu、Zn、Mo、Cd、Sn、Pbに関し、その混入挙動を検討した。用いた電解浴はそれぞれ塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムを含有する塩化物浴および硫酸塩浴であり、pHは4に調整し、浴温は40、80℃の2種類で行った。 Cu、CdはFeより貴な金属であり、Fe中のこれら不純物の含有率はすべての実験条件下で浴中の不純物濃度比よりも高くなった。したがって、これらの不純物に関しては浴中のレベルを低下させる以外には電気化学的にその共析を抑えることは困難であった。 Ni、CoはFeより電気化学的に貴な金属であるが、合金電析においてはFeの優先析出が認められ、異常型共析に分類されている。したがって、40℃の硫酸塩浴においてはこの異常型共析の特徴が端的に認められ浴中の不純物濃度に比較してFe中の不純物レベルは低く抑えることができた。しかしながら、80℃および塩化物浴においては、異常性が弱められ不純物含有率の増加が認められた。 さらに、Moはやはり誘導型共析という特異現象のため、PbおよびSnはこれらのイオンの溶解度のために、Feよりも貴な金属であるにもかかわらずその共析速度は小さく、浴中の不純物レベルを抑えることによりFe中の不純物含有率のより一層の低下を期待できた。 次に、Feより卑な金属であるZnの混入挙動を調べた。Znの標準単極電位はFeより約0.3V卑であるので、通常の電気化学的な見地からはその共析を考える必要はないものと思われる。ところが、Zn-Fe系においても異常型共析挙動が現われ、しかもFeの電析電位域でZnのUnderpotential析出が認められた。したがって、Znも電解Fe中への共析不純物として考慮する必要があることが判明した。
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