研究概要 |
SrOーSrF_2系およびBaOーBaF_2系融体について導電率の測定と実体顕微鏡による直接観察を行った。これらの系においても以前申請者が行ったCaOーCaF_2系融体と同様に,導電球の酸素分圧依存性および酸素分圧変化による融体の透明,不透明の可逆変化を示す組成域があることがわかった。このことから,蛍石構造のCaF_2,SrF_2,BaF_2を含む融体では蛍石構造類似の短範囲規則性を持つ液体格子が存在し,酸化物の添加により液体格子中に生じた空孔と雰囲気中の酸素の反応により生成した正孔の濃度変化によって,導電率が変化するという考え方が支持された。さらにMOーMF_2系融体(M=Ca,Sr,Ba)において,MOの添加量が同じでも導電率の変化が認められる酸素分圧の範囲が異なった。この違いはMーF間のク-ロン力の強さに依存し,その力が一番弱いBaF_2を含む融体においてフッ素と酸素の置換が最も起こりやすく格子の空孔濃度が高くなるため,雰囲気中の酸素の侵入が容易になるためであると推定した。 さらにSnX_2ーP_2O_5系融体(X=F,Cl,Br,I)の構造を推定するために,高分解蛍光X線分析とIR分析を用いてこれらの系のガラスの構造を調べた。SnF_2,SnCl_2を添加した系では,PーF,PーCl結合の生成およびP=O二重結合の消滅が認められた。Pとの結合力が強いハロゲンを含む系においてPーX結合が生じやすく,P=O二重結合を分断する傾向が強いことがわかった。融体中ではSn^<2+>とSn^<4+>が混在しており,Sn^<4+>は酸フッ化物イオンとして存在しているものと推定された。
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