研究概要 |
銅スラグを水素:炭酸ガス=1:1のウスタイト安定雰囲気で溶解後、冷却速度を変えて凝固させ、X線回折強度からCCT図を作成した。同様の手段で、保持温度、保持時間を変化させ、TTT図を作成した。銅スラグをウスタイト安定雰囲気で熱処理すると、出現する結晶相はいずれの条件でもファイアライトのみであった。マグネシアはファイアライト相に、ライムおよびアルミナは低鉄高シリカのガラス質のマトリックス部に濃縮する傾向を示した。冷却速度を変えて凝固させた銅スラグからの鉄の溶出濃度は、冷却速度が遅くなるにしたがって高くなる傾向を示した。砒素の溶出濃度は、中性付近では冷却速度による差はほとんど見られず、強酸強塩基側では急冷したものほど高くなった。銅、鉛、亜鉛の溶出濃度は、全てのpHにおいて急冷ガラス化したものの方が高くなった。ただし、いずれの元素の溶出濃度も環境規制値以下で、銅スラグはガラス化、結晶化のいかんにかかわらず、環境的には問題がないことが明かとなった。 ガラス化した銅スラグを大気中で高温酸化させると、55℃付近からファイアライトが晶出しはじめ、700℃付近でその量は最大となった。さらに高温で酸化処理すると、ヘマタイト、マグネタイトが生成し、950℃以上ではファイアライトが消失し、ヘマタイト、マグネタイト、シリカの結晶相へと変化した。鉄の溶出濃度は、700℃付近で酸化処理するといったん高くなるが、さらに高温で酸化させると低下する傾向を示した。砒素の溶出濃度は高温酸化処理により増加する傾向を示したが,その絶体値は環境規制値以下であった。また、銅スラグを高温酸化させると、強酸に対する耐食性が著しく向上することが判明した。
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