研究概要 |
溶湯にチルブロックを浸漬し,そのチルブロック表面上に凝固殻を形成させる浸漬チル法を用いた。溶湯組成として電解鉄に所定の炭素を加えた炭素鋼とした。溶湯温度を1823Kとし,その温度で銅製(一部は銅製のチルブロックも用いた)のチルブロックを80mm深さまで浸漬し,5秒間そのまま溶湯中に保持し,急速に引き上げた。この浸漬時間で約5mm厚さの凝固殻を得た。結果は以下のようにまとめられる。(1)炭素濃度を0.07%から0.25%,浸漬速度を約30mm/Sから130mm/Sに変化させたが,0.13%から0.18%の炭素濃度を有する亜包晶組成の場合が,凝固殻の不均一度が最も大きくなった。またその不均一度は浸漬速度を増すと,いくぶん減少する傾向にあった。(2)0.07%炭素濃度の試料では,チルブロック側にチル晶が見られ,そのチル晶の厚さが厚くなっていた。また柱状デンドライトはそのチル晶を基として成長し,その結果比較的均一な厚さの凝固殻を形成した。このことは低炭素鋼は銅製のチルブロックとの濡れ性が悪く過冷しやすいといえる。(3)0.25%炭素濃度の試料では,短い柱状デンドライトがチルブロック側から直接成長し,そのデンドライトの成長を引き継ぐようにして次第に長い柱状デンドライトへと変化し,そのときも比較的均一な厚さの凝固殻を形成した。このことは中炭素鋼と銅ブロックとの濡れ性が良いと見なされる。 (4)0.13および0.18%炭素濃度では,チルブロック側の凝固組織がチル晶および方向性のないデンドライトが混合し,それを基として成長する柱状デンドライトも乱れた状態を引き継ぐため,不均一厚さの凝固殻を形成した。(5)鋼製のチルブロックを0.30%炭素鋼に用いたとき,チルブロックの表面が粗い程チル晶が厚くなり,滑らかな程薄くなった。この結果,鋼製のチルブロックと溶鋼との濡れ性は銅製のチルブロックより悪いと見なされる。
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