研究概要 |
本年度は、非鉄合金溶湯にチル板を浸漬させる浸漬チル法により、チル板上に比較的急速に冷却した薄い凝固層を形成させ、組成及び相変化によるリップルマークの有無、凝固殻の発達と凝固組織との関係を調査した。用いた組成は(1)純Al,Al-4%Cu,24%Cu,33%CuのAl-Cu合金、(2)Al-12.6%Si共晶合金、(3)Sn-12%Sb合金である。(1)は溶質濃度の相違による凝固遷移層長さと初晶生成量の相違による影響、(2)は共晶凝固による影響、(3)は初晶が金属間化合物である影響について調査した。内径85mm、高さ180mmのアルミナるつぼで溶解し、溶湯の温度測定はるつぼ内壁面で行った。各組成の溶湯を液相線温度より30K高い温度で600S保持後、チル板を浸漬させ、溶湯中に4秒間保持した後にチル板を急速に引き上げた。得られた凝固殻の厚さは約5〜8mmであり、浸漬速度は約5mm/S〜100mm/Sの範囲である。結果として、鋳塊表面のリップルマークは、固液共存区間の短かい合金系で浸漬速度の遅いほうが形成しやすい傾向を示した。またリップルマークの形状が上下対称であることから、本実験ではリップルマークの形成はメニスカス部の酸化膜がベンディングしたことによって形成され、従来提唱されている凝固殻の不均一成長とは必ずしも関係しなかった。一方、Al-Cu系合金の凝固の不均一による凝固殻の凹凸度は、凝固区間の短かい方が大きくなったが、Al-Si系およびSn-Sb系では凹凸の形態が異なった。このことは初晶が局所的に生成するとき温度分布が不均一となり、その結果熱応力分布が不均一となって凝固殻の変形を生じるために凝固殻の不均一凝固を生じることが基本となるが、合金系による結晶生成と成長との連続関係および凝固殻の強度がそれに加わる要因と考えられる。
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