本年度は、組成および相変化による不均一凝固殻の形成実験結果をもととして、コンピューターシミュレーションを行った。 チル板および溶湯をメッシュに区分し、通常の熱伝導方程式を差分化して計算した。仮定としては、溶湯およびチル板の初期温度は一定、空気へは輻射伝熱、チル板に接した溶湯が凝固した場合は、そのままメッシュを入れ換える形で計算を進めた。また一定浸漬速度で計算した。計算の対象は炭素鋼であり、組成を0.07%C、0.13%C、0.25%Cとした。浸漬時間は5秒間である。ここではチル板表面に形成される凝固層を固相率で分類した。p層は固相率0.67以上であり、q_1層は固相率0.30から0.67の範囲にあり、q_2層は0.30以下である。q_2相と液相は区別しないで表示している。これはある厚さまで凝固殻を形成したのちに溶鋼から引き上げているので、このとき固相率の小さい領域は実際に観察される凝固殻にならないことによる。このことを考慮して、0.30以上の固相率を有する固相を凝固殻として表示している。計算結果は、いづれにも凹凸形態は表れず、浸漬チル板の下部から連続的に凝固することが示された。このことから浸漬方向に平行な方向での凝固遅れが潜熱によるものではないことになる。そこでq_1相の温度段階に至るとチルブロックと凝固殻の間で局所的に熱抵抗が大きくなることを想定して、半分の熱伝達係数値となる場所を設定して計算すると、熱抵抗の大きい部分は凝固遅れ部となって不均一な凝固殻を形成できた。熱抵抗の大きくなる理由として、局所的なエァーギャップを想定しているが、それがなぜ間欠的あるいは局所的に生じるかについての説明はできなかった。そのため補完実験を行い、エァーギャップ形成は凝固した直後の熱応力による固相変形がチル板からの凝固層を剥離し、熱抵抗を大きくした。
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