研究概要 |
1GPa以上の高強度と高導電性を兼ね備えた導線開発を目的として、Nbせん維強化合金を対象に研究を進めてきた。Cu-Nb合金は、NbがCuへの固溶度をほとんど有していないため、マトリックスのCuが高い導電性を維持できることが期待できる。一方でCu,Nbとも酸素を吸収し易いことから、その影響が現れることも予想される。本研究では、CaOルツボを用いた高周波溶解および非消耗電極式アーク溶解にてCu-10,15,20wt%Nb合金を溶製し、強度の伸線後の機械的性質、電気抵抗、および熱処理によるそれらの変化について検討を行なった。いずれの溶解法でもNbデンドライトの平均直径は約4μmと変わりなかったが、比較的低加工度でアーク溶解材が高い強度を示すことおよびCaO溶解材の方が優れた加工性を示すことから、Nb中の酸素量がアーク溶解材で高いものと思われる結果となった。しかし加工度が上昇すると両者の差は縮まり、いずれでも1.6〜1.7GPaの強度が得られた。この事実と複合則からの大きなずれは、この合金の強度はNbせん維の強度よりもNbせん維間幅によって支配させていることを示唆している。Ca-Nb合金線材の強度がNbせん維径の-1/2乗に比例していることもこれを裏付けている。伸線後の熱処理では、両者は異なる挙動を示した。アーク溶解材では、熱処理後の徐冷、急冷による差が現れなかったが、CaOルツボ溶解材では、徐冷の方が熱処理温度の上昇とともにゆるやかな強度低下を示す一方で、比抵抗の低下量が大きかった。また急冷材が時効性を示すこともCaOルツボ溶解材の特徴である。1Gpa以上の強度と純銅の70%以上の導電率を1つの目易とすると、Cu-10wt%Nbのみがこの条件を満足した。低温用途で問題となる残留抵抗比R.R.Rは純銅に比較して1桁低く、Cu-Nb界面での電子散乱の効果が大きいことが明らかにされた。
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