材料の成形向上のために新材料の開発や、新しい加工技術の研究・開発が盛んに行われている。アルミニウム板材の温間成形は、深絞り成形・ポンチによる張出し成形・伸びフランジ成形・曲げ成形など室温成形に比べて大幅な成形性の向上が得られている。本研究では、焼戻し用塩欲剤を圧力媒体として用いた高温液圧によるアルミニウム板材のバルジ成形を行う加工機を試作し、液体の温度・板材の材質・板圧などが液圧や成形限界、成形形状及びひずみ分布などにたいしてどのような影響を与えるかについて実験的に検討するとともに、汎用有限要素法プログラムを用いて数値シュミレーションを行い、バルジ成形のメカニズムを明らかにした。製作した高温液圧バルジ成形装置を用い以下の実験を行った。供試材はA1050-II14(工業用純アルミニウム)に加えて、A5182-0(4.5%Mgを含むアルミニウム合金)とした。試験温度は200℃から450℃で、液圧・変形高さ・ひずみ等を測定し、また成形速度を変えて実験を行い、成形限界等に及ぼす影響を調べた。また本研究では有限要素法プログラムを用いてアルミニウムいた材のバルジ成形の解析を行った。要素は2節点軸対称要素を用い、等方性材料として扱い、曲げを考慮したかく理論により解析を行った。以上の実験により、液圧バルジ成形の成形限界を向上させることが可能となることを示した。さらに有限要素法プログラムを用いて数値シュミレーションを行い、この高温液体による加工の特性をより明らかにした結果をまとめる。(1)温度の上昇にともない液圧が減少し、450℃では室温の約10%の液圧で成形が可能である。 (2)A1050材の最大変形高さは、400℃より大きく向上した。A5182材は温度上昇に伴い向上した。 (3)変形高さ20mmにおいては、形状・ひずみ分布の温度による影響は認められなかった。 (4)変形量が増すにつれて、頂点近傍のみ変形がおこなわれる。 (5)流量0.18〜0.90l/minの範囲では、成形限界・形状の成形速度による影響は認められなかった。 (6)A1050材において、350℃以下では圧延方向に破断を生じたが、400℃以上では圧延方向によらず破断する。 以上によって板材の加工性の拡大の可能性を実証し、この加工法の日常的に有用であることを示した。
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