研究概要 |
赤外線加熱式浮遊帯溶融法にトラベリングソルベントを付加したTSFZ法は酸化物単結晶を作製する方法として優れている。申請者等は在来の装置を用いて、主として214型超伝導酸化物及びその類縁酸化物単結晶を作製してX線及び中性子線単結晶回析実験を行ってきた。214型酸化物とその類縁酸化物は比較的単純な結晶構造を持っていることも幸いして,TSFZ法によって6φx100mm程度の単結晶を育成することができたが結晶の質と化学組成にバラつきがあった。その原因は育成中のトラベリングソルベントの化学組成が浮遊帯の移動に伴って変化し、対応する初晶領域を逸脱してしまうことにあることが計算機シュミレ-ションによってわかった。 本年度、在来の赤外線集中加熱式単結晶作製装置(SCー4、ニチデン機械製)を改造し、上下軸移動部とギャップ調整部が独立に、かつ計算した通りの速度で精度良く運転できるようにパルスモ-タ-を取付け、パ-ソナルコンピュ-タの制御の下に置いた。この装置を用いてPr_2CuO_4、BiCuO_2,La_2NiO_4およびLa_2CuO_4等、既に作製経験の有る試料の単結晶を育成するべく予備実験を行った。作製された単結晶の一部についてX線及び中性子線回折測定を行った。Prを含む酸化物の場合、X線回折実験によって詳細にCuO_2電気伝導面の電子密度分布を測定することができた。La_2NiO_4については結晶中の過剰酸素量を中性子回折強度から決定する事が出来、さらにNiイオンの持つ磁気モ-メント並び方の温度変化も決定する事が出来た。これらの結果の一部を学術雑誌等に公表した。
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