研究概要 |
銅母相中の析出鉄粒子は、適当な熱処理を施すことによって、整合なγーFe粒子、または、非整合なαーFe粒子とすることができる。本研究は、銅ー鉄合金単結晶を用いて疲労試験を行い、析出形態の異なる鉄粒子が変形挙動と内部転位組織の発達にどのような効果を及ぼすかについての、基礎的な知見を得ることを目的としている。 本年度は、まず試料作りから始めた。方位制御された銅ー鉄合金単結晶をブリッジマン法で作製し、単一すべりで変形するように[T49]応力軸をもつ肩つき疲労試験片(ゲ-ジ長さ10mm,断面積3×4mm^2)を切り出した。これらの試験片に熱処理を施し、溶体化試料とγーFe粒子を含むγーFe粒子試料を作った。さらに、γーFe粒子試料を77Kで20%引張り、γーFe粒子をαーFe粒子にマルテンサイト変態させた後、焼鈍を行って、αーFe粒子試料とした。繰り返し変形は、油圧サ-ボ疲労試験機を用い、引張ー圧縮塑性ひずみ制御法(ひずみ振幅10^<-4>〜10^<-2>)で行った。 種々のひずみ振幅での繰り返し変形を行った結果、どの試料でも繰り返し硬化が見られた。転位が貫通できると考えられる整合析出物を含むγーFe粒子試料でも、飽和応力に達した後の軟化はほとんど見られなかった。これは、初期の予想とは異なるものであったが、磁気測定によって、γ→αマルテンサイト変態の変態率を調べたところ、γーFe粒子試料中にも、繰り返し変形によって、変形誘起マルテンサイト変態が起こり、非整合なαーFe粒子に変ってしまうためであることがわかった。飽和応力とひずみ振幅の関係を示す繰り返し応力ーひずみ曲線には、いわゆるプラト-領域が観察された。このプラト-領域の発生原因と、内部転位組織との関係は、現在、透過電子顕微鏡による組織観察によって解明中である。
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