研究課題/領域番号 |
03650573
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
井口 栄資 横浜国立大学, 工学部生産工学科, 教授 (60017960)
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研究分担者 |
青木 瞭 横浜国立大学, 工学部生産工学科, 助手
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キーワード | 遷移金属酸化物 / ポーラロン / 誘電特性 / 直流伝導度 / 電子-フォノン相互作用 / Andersonの引力ポテンシャル / 微小局所格子歪場 / コンデンサー |
研究概要 |
多くの遷移金属酸化物セラミックスの電子伝導は電子または正孔のポーラロンが電子-フォノン相互作用によって誘引された格子歪場の掃引を伴ったイオン間のホッピングによることが今までの本研究で明らかになってきていた。キャリアーがポーラロンの場合、その有効質量が非常に大きいため易動度が小さく従って電子伝導度も小さい。一方ポーラロンの運動は双極子モーメントを誘起するので誘電率が高くなる可能性があり、ポーラロンが主なキャリアーである酸化物はコンデンサー材料として有望である。平成5年度はLi_xCo_<1-x>O、α-Li_xMn_3O_4及びSrMnO_<3-x>を対象として研究を行った。その結果Li_xCo_<1-x>O、α-Li_xMn_3O_4は典型的なポーラロン伝導現象を示し、これらの実験から不明であったポーラロンに関する重要な物理量が決定された。しかし、SrMnO_<3-x>は本研究の実験ではポーラロン伝導を直接示唆する結果は得られなかった。また、ポーラロンが遷移金属酸化物で安定に存在しうることをAndersonのattractive potentialとshell modelを用いて理論的に示し、実験験では求めることのできない物理量、即ち電子-フォノン相互作用の強さ及び格子歪場を与える局在した電子(または正孔)の周囲のイオンの変位量の算出に成功した。 コンデンサー材料の条件は高誘電率、絶縁体である。本研究で調べられたポーラロン伝導を示す遷移金属酸化物は一般に誘電率は非常に高く、伝導率も極めて低い。しかし、絶縁体ではない。いかに有効質量が大きく易動度が小さくても、ポーラロンはホッピングによって結晶中を移動するから、必然的にある程度の電子伝導度を持つ。しかし、この問題は既に技術的に確立しているセラミックスの結晶粒界絶縁化処理によって解決出来るであろう。従ってポーラロンが主なキャリアーである酸化物は高機能コンデンサーとなりうる可能性が大きい。
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