研究概要 |
数種類の鉄ー炭素二元合金を用いて,上部ベイナイト(BI,BII,BIII型)および下部ベイナイトの存在領域(温度,炭素濃度)を示す形態図(Fig.1)を作成した。ここでBIは炭化物(θ)を含まないベイニティックフェライト(α),BIIはα界面にθを析出した典型的な上部ベイナイト,BIIIはα内にもθを含む上部ベイナイトである。 ベイナイト変態モデルとして,「母相オ-ステナイト中で変態前にC濃度のゆらぎが生じ,Ms点が上昇した微小領域がマルテンサイト的に変態し,その周辺の微小領域のC濃度の低下をまって逐次成長する」を提唱した。このモデルではベイナイトが核生成・成長するときのC濃度はFig.1のMs点に相当した濃度となる。このモデルにより,1)Bs点が炭素濃度に依存しないこと,2)BI,BII,BIII型と形態変化する理由,3)上部/下部遷移温度が350℃一定となる理由が説明できた。詳細省略。 このモデルではBs点はC%=0のMs点である550℃となるはずであるが,観察結果はそれより50℃高い。これは熱力学的計算からマルテンサイト変態では1200J/molのひずみエネルギ-が発生しするのに対し,ベイナイト変態ではそれが800J/molと小さいため,マルテンサイトほどの過冷度を必要としないためである。 下部ベイナイトの結晶学はθの析出面を格子不変歪面としてマルテンサイト変態の現象論により予測できた。
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