研究概要 |
組織制御された材料の微細組織の評価にはX線検出器を備えた空間分離能の高い分析電子(AEM-ESD)がきわめて有力であることが示された. 1.分析電子顕微鏡X線分析法の汎用化(1)k因子決定に標準バルク試料を用いる方法は標準薄膜試料を用いる方法よりもS/N比が小さく,k因子の誤差が大きくなることが知られた.(2)試料を傾斜させ薄膜試料中のX線光路長さを変化せることにより,特性X線の吸収補正に用いる外挿法がより汎用化できることを示した.(3)計算機支援と高輝度の電界放射型電子銃を備えたAEM-EDSにより吸収補正に伴う外挿法に要する時間は従来より大幅に短縮させ,測定精度も向上した. 2.材料の微細組織制御への応用(1)析出強化型合金の強化量を表す重要なパラメータである分散粒子の体積分率を求めるために電顕観察領域の正確な膜厚の測定が必要であるが,AEM-EDSを利用したX線吸収差法を不規則γ相を含むNi_3(Al,Ti)合金および微細分散炭化物を含むTiAl合金の膜厚測定に適用し,他の方法よりも高い精度で膜厚測定ができることを示した.(2)Ni-Al-Ta系Ni側3元合金におけるγ/γ^'相平衡の研究にAEM-EDMを用いた.2相合金中のγ,γ^'相の化学組成から2相領域のtie-lineおよびγ,γ^'相中へのTaの分配率を決定した.(3)Ni-Al2元系のNi/Ni_3AlおよびNi_3Al/NiAl拡散対を用い,異相界面および接合界面近傍の濃度測定や組織観察を行った.AEM-EDSと電子線マイクロアナライザー(EPMA)で測定した相互拡散系数は同様な値であることから,空間分解能が低いEPMAでは測定不可能な低温度域での拡散係数もAEM-EDSでは測定できることが示された.
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