(1)初年度には、ファイバー電極とそれを用いるための簡単な構造のフロー電解セルを考案し、その基礎的研究を行ったが、当年度はこの継続し、さらに研究の発展を計った。 (2)フロー電解セルを用いるストリッピングボルタンメトリーでは、比較的多量の試料溶液を必要とするので、環境試料などの分析に適した方法である。しかし、少量しか入手できない貴重試料や新素材などで離溶解性の固体試料のmg量以下の分析をするには必ずしも適した電解セルとはいえない。そこでバッチ型の電解セルによる方法について検討した。アクリル樹脂製の円錐形電解セル(試料液量50ul)と、その底面にネジ込み式の銀/塩化銀参照電極(対極兼用)を用い、作用電極にはカーボンファイバー電極(7-10Φx3-5mm)に陽イオン交換膜ナフィオンを修飾し、さらにin-situに水銀メッキした電極を用いた。試料溶液の撹拌には窒素ガスを通し、同時に溶液中の酸素の除去をも行うようにした。これらの条件により、再現性のよいストリッピング電流電位曲線が得られた。銅、鉛及びカドミウムの0.1ppbレベルでの相対標準偏差はカーボンファイバー電極でそれぞれ1、2および5%、グラシーカーボンファイバー電極でそれぞれ3、6及び6%であった。しかし、固体試料の分析に応用するには窒素通気による試料溶液の飛散損失、微少量液量のためのコンタミネーションの相対的な増大及び強酸性試料溶液中では銀/塩化銀電極の溶解とその作用電極上への析出による再現性の低下などの問題が明らかになった。前2者については解決したが、最後については問題が残されている。さらに現在は、3-5μ1の超微小量試料溶液用の超ミクロ電解セルとこれに適した作用電極・対極・参照電極一体型のディスク電極、バイブレーターにより溶液の撹拌を行う全く新しいシステムの開発を行っている。
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