1975年にスエ-デンのPorathによって開発された固定化金属アフィニテイクロマトグラフィ-用の吸着ゲルとしてはアガロ-スのマトリックスにスペ-サ-を介してイミノ2酢酸の官能基を付けたものが多く用いられてきた。しかしこの吸着ゲルを用いた場合には蛋白質の吸着・分離操作の過程において固定化した金属が漏出するという大きな欠点があった。また従来の研究においてはクロマト操作による蛋白質の分離の可否を定性的に論じたものが多く、金属イオンや各種の蛋白質の吸着に及ぼす諸因子の効果を物理化学的に検討したものは少ない。 これらの問題点を解決するため本研究においては以下に示す新規の官能基を有する吸着ゲルを合成した。 1)エチレンジアミン(en)型およびトリアミノトリエチルアミン(tren)型ゲルーーーマトリックスとして架橋型アガロ-スであるSepharose4Bおよびト-ソ-製の合成高分子を用い、これをエピクロロヒドリンで活性化し、更にエチレンジアミンおよびトリアミノトリエチルアミンをカップリングさせることにより合成した。 2)カルボキシメチル化en型およびtren型ゲルーーー上記の方法で合成したゲルとブロム酢酸とを反応させることにより合成した。 吸着実験はこれらの新規のゲル、及び比較のため従来型のイミノ2酢酸型ゲルを用いてクロマト操作ではなく、バッチ操作により吸着に及ぼす諸因子の効果を検討した。平成3年度は金属の吸着を中心に研究を行い、銅イオンの吸着に及ぼすpHの効果を明らかにし、吸着等温線、各ゲルの銅イオンに対する飽和吸着量を求めた。 固定化金属として3価のクロムまたはコバルトを用いると、いずれのゲルにおいてもグリシンやイミダゾ-ルなどの錯化剤を流してもこれら金属の漏洩は起こらず、上記の問題点が解決できることがわかった。
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